相続遺言判決実例集…(東京高判・平成3年2月4日判時1384号51頁)


  • (東京高判・平成3年2月4日判時1384号51頁)
 

(東京高判・平成3年2月4日判時1384号51頁)


 (東京高判・平成3年2月4日判時1384号51頁)

「一般的にゴルフクラブは会員の人的信頼を基礎とする親睦団体としての性格を有すると一応言うことができるが,一いわゆる預託金会員組織のゴルフクラブにおいては,会員はゴルフ場施設の運営管理に参画することが制度的に保障されておらず,また,会員相互の人的信頼関係を基礎としてゴルフクラブが組織,運営されているわけでもないのであって,ゴルフクラブの会員の地位は一ゴルフ場施設の優先的利用権を基本的な権利とする契約上の地位に過ぎず,ゴルフクラブはゴルフ場施設を運営,管理する会社との間で右のような契約関係に入った会員の集団とでもいうべきものであるから,その地位は原則として一身専属的なものではないというべきである。もちろん,預託金会員組織のゴルフクラブにあっても会員相互の親睦を図るということは重要な事柄であって,入会しようとする者が当該ゴルフクラブの会員としての適格性を有するか否かを審査した上でなくては入会を認めないというのも当然のことであるが,会員の地位の承継の場合も,承継人の会員としての適格性はその承継人の入会申請に際して審査されれば足り,このことは承継の原因が譲渡であるか,相続であるかによって別異に解すべき理由はない。しかし,預託金会員組織のゴルフクラブの会員の地位がYと会員との間の契約関係であることからすれば,このような会員の地位の承継についても予め会則等によって明確にその承継を禁止する規定を置けばその承継を否定することができるというべきである。この点、Yは、Zゴルフクラブ会則第10条に死亡の場合は会員資格を失うとの規定があることを根拠として,会員が死亡した場合,その会員の有していた会員資格(会員の地位)は絶対的に消滅し,その相続人は預託金返還請求権を相続するだけである旨主張している。しかし,前認定のとおり,Zゴルフクラブは会則上会員資格の譲渡性を認め,そのいわゆるゴルフ会員権は会員権取引業者によって取引きされ,一定の市場価格が形成されており,そこでゴルフ会員権として取引の対象とされているのは入会承認前の会員としての地位とみることができ,このような地位の譲渡を認める限り相続による地位の承継を否定する合理的な理由はないのであって,事柄の性質上,相続による承継を認めないというのであればその旨を会員が知り得るように会則等に明確に規定しなくてはならないというべきである。Yは右会則第10条がその趣旨の規定である旨主張しているところ,一,会則第10条及び会則全体の整合性などからすると会則第10条は会員としての地位の相続性まで否定する趣旨の規定と解することはできず,単に死亡した会員は会員資格を失うという当然のことを注意的に規定したに過ぎないものと解すべきである。」

 


 

 


 

 
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