相続遺言判決実例集…(京都地判昭和34年6月16日家月12巻9号182頁)


  • (京都地判昭和34年6月16日家月12巻9号182頁)
 

(京都地判昭和34年6月16日家月12巻9号182頁)


 (京都地判昭和34年6月16日家月12巻9号182頁)

「一,先づ本件のように順位を異にする二つの相続人たる地位を兼有する者が先順位たる資格において相続の放棄をした場合その効力は全面的に生じ更に後順位の資格に因り相続をする余地がないのか(積極説,同旨大分地裁判決大審院民集19巻1633頁参照),それとも相続l頂位は夫々各別に観察すべ<,同一人が先順位の相続人たる資格において相続の放棄をした場合でも当然には後順位の資格による相続放棄の効力を生じないと解すべきか(消極説,同旨昭和15年9月18日大判,民集19巻1624頁参照)については説分れる。もしこの点について前説が是認されるとすれば,被告が被相続人ヨネの妹であり且つ養子であり,被告が養子として相続の放棄をしたことについて当事者間に争がない本件においては被告が原告主張のようにヨネの相続をする余地は全然ないのであるから爾余の点について判断するまでもなく原告らの請求は理由ないことになる。このようにこの前提問題の解決は本件について重大な岐路となるのでこの際この点を再検討する。前説は当該放棄者について「先順位たる資格において相続の開始があった以上その者の相続人たる地位は一あってこなきものであり且つ相続の放棄とはその者の相続人たる地位を遡及的に消滅せしめる意思表示であるから同一人が他の同一順位の相続人全員と共に先順位たる資格において取得した相続の放棄をした以上後順位の資格においても(全面的,全人格的に),相続の放棄の効力を生じる」というのであるが,中間順位の相続人がいる場合や,そうでなくとも順位を異にするに因り共同相続人の員数を異にする場合の存することを考えてみるとたとえ同一人が二つの資格を兼有する場合でも相続の放棄はやはり相続順位(資格)に応じ各別に観察するを相当とするとの見解が正しいといわねばならず,またこれを区別する実益がある。けだし同一の被相続人間の相続についても放棄の対象たる相続の内容は順位を異にするより別異のものとみられるからである。」

 


 

 


 

 
相続遺言判決実例集